本とかコンピュータとか

10000冊プロジェクトに参加するため、ブログを立ち上げました。読んだ本の感想とか、つらつらあげます。

書評その5:「思想としてのパソコン」

『思想としてのパソコン』
著者:西垣通(編訳&序文&後書き)
発行日:1997/5/20
評価:★★★★☆
所要時間:10時間
読破冊数: 5/100冊

■こんな人におすすめ
・パソコンがマイコンと呼ばれた時代を生きた先輩方
・コンピュータが出たばかりの頃、研究者たちがどんな未来を描いていたか、気になる
コンピュータサイエンスを研究しようとしている人


■概要
まず、この本は論文集なので学術的な話が嫌いな人にはおすすめできません。
だけど、学術としてのコンピュータサイエンスに興味がある人や、論文の文章にある程度耐性のある人にはものすごくおすすめです。

この本で収録されているのは、ヒトとコンピュータとの関係を研究する上での「キーマン」と著者が呼ぶ7人の研究者たちの論文。
どれもすごいです。いずれの論文も現在のIT技術の問題を語っているんですが、何がすごいって今ほど情報技術が発達してなかった頃にまだ実現してもいないものに対して利点と問題点を提示し、ヒトがそれにどう関わっていくかを真剣に考えていたんです。ものすごい想像力じゃないですか。

例えば1章で紹介されているブッシュ(大統領ではない)の論文は未来の研究者の姿について、「動き回り観察しながら、写真をとり、注釈を述べる。写真と注釈とを結合するために時刻が自動的に記録される。~」
と言ってます。これって今スマホで実現可能なことだと思うんです。しかも、ブッシュが提唱する文書管理装置「メメックス」の構想はハイパーテキストという概念の先駆けとなるんですが、インプットした文書の検索やタグ付けなどの機能を一つの装置がもつ、というイメージは、今でいうEvernoteのようなアプリを連想させます。
この論文が書かれたの1945年ですよ。昭和20年ですよ。こんな思想が半世紀以上前にあったんです。

ブッシュの他にもウインドウやアイコンのようなインターフェースを実現したエンゲルパート、電子マネーや暗号通貨につながる概念に言及したケオーなどIT技術の原点を見ることができると思います。

敷居が高いと感じるなら著者のまえがきだけでも読んでみることをおすすめします。
7人の研究者についてわかりやすくまとめている上にコンピュータの発展について時系列順で解説されているため、ここだけでもパソコンの歴史を語った本として良書!


■この本から学んだこと
・「パソコン」に関するの概念はパソコンそのものが生まれるよりもずっと昔に語られていた。
・ある分野に対し、真面目に知識をつけようと思うなら原点は避けられない。特に学術的な分野はなおさら。


≪目次≫
まえがき 思想としてのパソコン
1 われわれが思考するごとく
2 コンピュータと知能
3 ヒトとコンピュータの共生
4 ヒトの知能を補強増大させるための概念フレームワーク
5 インタラクティブ・システムとバーチャリアリティ設計
6 協調活動の設計における言語/行為パースペクティブ
7 サイバースペースの陥穽

思想としてのパソコン

思想としてのパソコン