本とかコンピュータとか

10000冊プロジェクトに参加するため、ブログを立ち上げました。読んだ本の感想とか、つらつらあげます。

書評その16:「考える鉛筆」

『考える鉛筆』
著者:小日向京
発行日:2012/4/6
評価:★★★★☆
所要時間:1時間
読破冊数:16/100冊

■こんな人におすすめ
・仕事や勉強で使う筆記具を探している
・使う道具にこだわりがない
・自分の好きなものがなかなか人に理解されない

■概要
鉛筆に対する作者の愛がこれでもかと伝わってくる本です。最初の方こそ鉛筆で書く心地よさだとか削る楽しみだとか、初心者にもわかりやすく魅力を伝えてくれます。

しかし作者の鉛筆愛が深すぎるゆえに鉛筆に興味がないと理解できない素敵な発言がちらほら。(鉛筆の削りかすは美しいから「かす美」と呼ぼう、削りたてのかすの香りはもはやアロマテラピーの一種だ、など)

第4章「どこにでも書いてみよう」で自分はついに「あ、この人はヤバイ」と思ってしまった。鉛筆で書く時に使う紙について語るときに原稿用紙、付箋などに続いて挙がったのが、「飲食店の紙ナプキン」。
しかも「これまでに訪れた店の紙ナプキンにはすべて鉛筆で試し書きをしてみた」という筋金入りの探究者ぶり。作者によれば最も魅惑的な紙ナプキンはマックのナプキンだそうな。「あのふかふか感と筆記スペースの広さはまさに紙ナプキン鉛筆筆記の真骨頂である」と、最大級の賛辞。っていうか紙ナプキン鉛筆筆記って何だその新ジャンルは(笑)
そして、極めつけは「ティッシュ」!ご丁寧にポケットティッシュにメモする方法を教えてくれますが、これはさすがに緊急用ですわ。。。メモ持ち歩こうよ。。。

自分も鉛筆の書き味が好きで、仕事でメモする時には鉛筆を使っています。でも、「削るのめんどいじゃん!」、「フリクションでよくない?」などと、なかなか理解はされません。

でも、鉛筆の削りカスの匂いをアロマテラピーとまで呼ぶこの作者の文章を読んでると、どうでもよくなってきました。なんか「お前の鉛筆愛が足りねぇんだよ!」と頭はたかれた気分。好きな物は好き、でいいんですよね。

■この本から学んだこと
ティッシュは頑張ればメモにも使える!
「そんな用途のためにも、鞄やポケットにはポケットティッシュをひとつ入れておきたい」by作者 (゜ロ゜;)
・自分が好き、という感情を大事にする。他人の評価は気にしない

≪目次≫
まえがき
1 鉛筆カスタマイズの愉しみ
2 鉛筆の持ち運び
3 そもそも、鉛筆って何?
4 どこにでも書いてみよう
5 思考の流れを邪魔しない鉛筆

考える鉛筆

考える鉛筆

書評その15:「あたらしい教科書9 コンピュータ」

『あたらしい教科書9 コンピュータ』
著者:山形浩生(監修)
発行日:2006/10/24
評価:★★★★☆
所要時間:2時間
読破冊数:15/100冊


■こんな人におすすめ
・インターフェースとかオープンソースとかよく聞くけど、ぶっちゃけわかってない
・コンピュータに興味はあるけど、難しそうだし、まずは浅いとこからざっくり知りたい


■概要
「あたらしい教科書」というシリーズなんですが、深い知識を得るためではなく、概要をざっくり掴むために読む本です。


文体は教科書の名に恥じないわかりやすさで、コンピュータ関連の用語を見開き一撃でサクッと説明します。用語、と言ってもIT業界だけで使われるような専門的な言葉は少なく、ニュースなどで登場するような、どこかで聞いたことのある言葉が中心です。


発行日が2006年と、ちょっと古い本ではありますが、死語になってるような言葉は今のところないです。(※2017年現在)


見開き一撃でも「へーこーゆーものなんだー」と理解するには充分な情報量だと思います。
コンピュータの知識がゼロの人でもこの本読んだ後なら多少はIT系のニュースがわかるんじゃないでしょうかね。


■この本から学んだこと
・「ジュラシック・パーク」でUNIXが言及されている。
・2006年当時、mixiSNSとしては一人勝ちの状態だった。
・ネットでは、未完成な文章の方が愛されることもある。


≪目次≫
まえがき
1 コンピュータと人間
2 コンピュータの歴史
3 道具としてのコンピュータ
4 インターネットの世界
5 ITで変わる暮らしと社会


コンピュータ (あたらしい教科書 (9))

コンピュータ (あたらしい教科書 (9))

書評その14:「世界で一番貧しい大統領のスピーチ」

『世界で一番貧しい大統領のスピーチ』
著者:くさばよしみ(編)、中村学(絵)
発行日:2014/3/1
評価:★★★★★
所要時間:0.5時間
読破冊数:14/100冊


■こんな人におすすめ
・欲しいものが手に入らなくてイライラする
・いらないものでも安いと買っちゃう
・金があるととにかく使いたくなる


■概要
ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ氏が2012年に開かれたリオの国際会議で行ったスピーチを絵本化したものです。この人の発言はいろんな形でシェアされていますが、この本では子どもでも簡単に読めるような文体で編集したうえで絵本にされてるので、すぐ頭に入ってきます。絵本と言っても小学生ぐらいの読者が想定されており、読み聞かせなどには適していません。

しかしまぁ、ささるささる。仕事上アホみたいに筆記用具やらコピー用紙やらを使い捨てしてる自分には、消費のために生産を続ける社会にNOを唱えるムヒカさんの言葉には返す言葉もございません。

既存のものにわずかに付加価値をつけただけの新製品に買い替えるために、まだ使えるものを捨ててもいいのか、と考えながら自分のAmazonの購入履歴を見ると罪悪感しかない。

そうはいっても、自分はネットとかコンビニとかドンキとかでお手軽に物が買えなくなる社会は嫌だなぁと思う矛盾を抱えた典型的ダメ日本人なのです。

とりあえずはまだ使える物は買い換えない(=必要ない物は買わない)、という当たり前なことから実践します。。。


■この本から学んだこと
・欲しい物を手に入れること=幸福とは限らない。
・消費するために生産する社会に疑問を持つこと


≪目次≫
省略


世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

書評その13:「ビッグデータの正体」

ビッグデータの正体』
著者:ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ
発行日:2013/5/20
評価:★★★★★
所要時間:3時間
読破冊数:13/100冊

■こんな人におすすめ
ビッグデータデータマイニングがどんなものか、よくわからない
AmazonYouTubeでみかける「あなたへのおすすめ」の仕組みに興味がある
・データでお金を稼ぐヒントがほしい人

■概要
ビッグデータ」とはその名の通り大規模かつ大量のデータのことです。この言葉自体は昔からあったみたいですが、盛んに使われるようになったのは2010年代に入ってからです。技術の進歩によって、サーバーのひとつやふたつじゃ管理仕切れないような量のデータが世の中に生まれ、この言葉を体現する状況も出てきたってことですね。

この本は、ビッグデータが社会にもたらす変化についてわかりやすく説明しています。それぞれの章で実例を交えつつ語っているし、構成も優れていると言えるかもしれません。しかし個人的には斎藤栄一郎さんの翻訳がわかりやすいこともおすすめポイントのひとつ。訳者のプロフィールに「主に情報通信やビジネス・経営分野の翻訳に従事」とあるので、やはり翻訳も適材適所なんだなぁと思ったり。

筆者は本の中でビッグデータがもたらす価値や意識の変化、そしてGoogleAmazonなどの企業がそれらをどのように利用しているかの解説、ビッグデータの持つメリットとデメリットなどで語っています。全体として客観的でわかりやすい文章なのでビッグデータの入門書として良書な印象。

ちなみに、筆者は2007年に300エクサバイト(1エクサバイト=10億ギガバイト、つまり3,000億ギガバイト)のデータが記録、伝達されたという学者の調査結果から、2013年にはその4倍の1,200エクサバイトのデータが世界に蓄積されると予想してます。

実際どうなったか。
総務省が出してる情報通信白書(平成26年度版)によれば2011年の時点で1.8ゼタバイト(1,800エクサバイト)と予想を大きく上回ってます。

筆者の予想した1.5倍のデータが、筆者が予想したより早く世の中に生まれているわけです。この本の中で語られているような変化も同じようなスピードで進んでいることになるんじゃないか、と思うとなんか怖いなぁ。

■この本から学んだこと
・今日、世界に存在する情報は1TBのハードディスクが18億台あっても収まらない

・何かの調査でデータを集める場合、全体の縮図となるように割合を調整せずに、無作為に集める方が高い精度になる

・データの相関分析を最初に提唱したフランシス・ゴルトンはダーウィンのいとこ

・データの一部を切り取って分析するのではなく、この世のデータ全てを使った分析が近い将来可能になるかもしれない

・データの分析においては因果関係より相関関係
※ただし、相関関係が見えても、その理由(因果関係)を断定することはできない。
例えば中古車市場を調査した場合、「状態が良い中古車はオレンジ色が多い」という結果がでても、それが「オレンジ色の車を持つ人=車を大切にする人」だとは限らない

≪目次≫
まえがき
1 世界を変えるビッグデータ
 When Data Speaks データが語り始めるとき
2 第1の変化「すべてのデータを扱う」
 「N=全部」の世界
3 第2の変化「精度は重要ではない」
 量は質を凌駕する
4 第3の変化「因果から相関の世界へ」
 答えが分かれば、理由は要らない
5 データフィケーション
 「すべてのもの」がデータ化され、ビジネスになる時代
6 ただのデータに新たな価値が宿る
 ビジネスモデルの大変化 その1
7 データを上手に利用する企業
 ビジネスモデルの大変化 その2
8 リスク――ビッグデータのマイナス面
 『1984』の悪夢は実現するか
9 情報洪水時代のルール
 ビッグデータ時代のガバナンスとは
10 ビッグデータの未来
 ここまで述べてきたことの「まとめ」


ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える

ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える

書評その12:「バンド・オブ・ザ・ナイト」

『バンド・オブ・ザ・ナイト』
著者:中島らも
発行日:2000/5/24
評価:★★★☆☆
所要時間:3時間
読破冊数:12/100冊


■こんな人におすすめ
・ダメ人間を疑似体験したい
・詩とかを読むのが好き
・自分の語彙力を高めたい


■概要
学生時代に読んだ小説ですが、この間友人が酒に酔って持ち物一式をなくした、という話を聞いて、ふと思い出して読み直してみました。


といってもこの本、ヒッピーくずれの主人公が飲むのは酒ではなく薬物。睡眠薬から覚醒剤マリファナなど様々な薬に手を出しては仲間と「ラリる」日々。友人以上にどうしようもないやつだなぁと思うけども妙に憎めない。一応相手に対する気遣いもできるし、仕事も主人公なりにちゃんとやるからなんだろうなぁ。


この本の最大の特徴は主人公がトリップしたときの表現方法です。素面の時は読みやすい文章で書かれているのに、トリップしたとたんに、
「そしておれは襲いかかる。トマホークで、果物ナイフで、義手で、鉄パイプで、三日月で、一陣の風で、ロンドンブーツで、歌声で、、、」
なんて、いきなり謎の世界に放り込まれるわけです。こんな調子で数ページ続くもんだから集中して読むほどこちらも酩酊したような気分になりそう。


学生時代はトリップ表現のために支離滅裂なこと書いてるんだな、と思ってました。しかし、文庫版の巻末で解説をしている町田康によれば、きちんと計算されており、「不明確な言葉はただの一語もない」んだそうな。


町田さんは解説の中で人生は素面でやっていかないと駄目だと言ってます。全くその通り。異論も認めない。ただ、その町田さんが読後に「いや、そうでもないかもしれんなぁ」とか思っちゃったこの本は実は危険な小説かも。


■この本から学んだこと
・人生は素面じゃないといかん!(友人への戒め)


≪目次≫
省略


書評その11:「最新 わかりすぎる情報セキュリティの教科書」

『最新 わかりすぎる情報セキュリティの教科書』
著者:株式会社SCC 教育事業推進本部
発行日:2016/2/15
評価:★★★★☆
所要時間:2時間
読破冊数:11/100冊

■こんな人におすすめ
・情報セキュリティ関連の仕事をする人
・職場でネットワークやサーバーなどのインフラ管理に関わっている人
・PCを使う業務に携わる人

■概要
キャラクターを使った導入(模野尻(ものしり)、井闇(いやみ)などヒネった名前がCool)、徐々に詳細になる解説など、タイトル通り情報セキュリティの教科書です。

情報セキュリティマネジメント、情報安全確保支援士といったIPAの試験に出そうな用語をわかりやすく解説しています。個人的には、今まで読んだ本の中で一番SQLインジェクションIEの入力フォームとかから特殊な文字列を入力してデータベースを不正に操作すること)を簡潔に説明していると思いました。

日常的な業務に必要なことはだいたい網羅されているし、IT関連の業務につく人は目を通しておいた方がいいかも。というのもITの現場ではある分野はものすごい詳しいのに他の分野は素人同然っていう人が結構いて(自分もかも。。。)、こういう教科書的な本でつける広く浅い知識も大事だなぁと感じるもので。

■この本から学んだこと
マルウェアにも開発チーム、バージョンアップの概念があること
・職場でのアダルトサイト閲覧は、設備の私的利用云々以前に環境型セクハラ
・他人の使ったツールのみで攻撃を行うクラッカーは、年齢問わず「スクリプトキディ」と蔑まれている。

≪目次≫
まえがき
1 ドクロのWebページ
2 私が内定を辞退したですって!?
3 裏切られた気持ちでいっぱい
4 「マイナンバー」って怖くないですか
5 怪しいメールは開くなっていったのに!
6 うちの社員に限って
7 セクハラ会社は嫌だ
8 アングラサイトの住人がパスワードを狙ってる
9 「もしもし、パスワードを忘れちゃったんですけど・・・」
10 インターネットの罠
11 サイバー攻撃?受けて立とうじゃないの!
12 謎は全て解けた。犯人はお前だ。
13 パスワードが見えました
14 その注文は本物?
15 スマホタブレットの利用

最新 わかりすぎる情報セキュリティの教科書~マイナンバー制度/改正個人情報保護法対応~ (SCC Books 384)

最新 わかりすぎる情報セキュリティの教科書~マイナンバー制度/改正個人情報保護法対応~ (SCC Books 384)

書評その10:「今日のアメリカ映画」

『今日のアメリカ映画』
著者:双葉十三郎
発行日:1952/5/30
評価:★★★★★
所要時間:3時間
読破冊数: 10/100冊

■こんな人におすすめ
・1940~50年代のアメリカ映画が好きな人

■概要
旅行先の古書店で発掘しました。もう図書館とか古本屋でしか見られない本なのでシェアしようか迷ったんですが、読書メモも兼ねて書いておきます。

1951~52年に公開されたアメリカ映画の批評をしている本です。

1章で当時のアメリカ映画の傾向をざくっと紹介してますが、SF映画を語ってるところが面白い。

当時は元祖「遊星からの物体X」や「地球の静止する日」が発表された次期であり、文章からは、今後は科学考証とかを適当にしたゲテモノ趣味の映画が増えてくるんだろうなぁという著者の嘆きが聞こえてきそうです。
「アフリカの人喰い土人のかわりに、得体の知れない他星人(?)をもってくればいいのだから話は簡単である。」と、ストーリーよりビジュアル重視になった当時の傾向を皮肉ってます。でもこういう土壌から「エイリアン」とか「プレデター」が生まれたのかと考えると無視できない歴史だよなぁとも思います。

個人的に好きだったのは上記の部分だけど、本書のメインは当時注目されていた8人の名優(ジョン・ウェイングレゴリー・ペックカーク・ダグラスダニー・ケイジーン・ケリーベティ・ハットンパトリシア・ニールエヴァ・ガードナー)&3人の監督(ダリル・F・ザナック、デヴィッド・O・セルズニック、サミュエル・ゴールドウィン)に対する批評です。本人のバックグラウンドから作品まで本当に懇切丁寧な解説で、1回や2回作品を見ただけではわからないようなところにまで言及してます。映画を見るときの参考書としてこれから重宝しそう。

■この本から学んだこと
・B級SF映画が生まれたのは1940年代後半!(適当)

≪目次≫
まえがき
1 概観
2 作家と作品
3 今日のスタア
4 今日のプロデュウサア
5 戦後五カ年のアメリカ映画