本とかコンピュータとか

10000冊プロジェクトに参加するため、ブログを立ち上げました。読んだ本の感想とか、つらつらあげます。

書評その8:「十津川警部 浜名湖 愛と歴史」

十津川警部 浜名湖 愛と歴史』
著者:西村京太郎
発行日:2015/5
評価:★★★☆☆
所要時間:2時間
読破冊数: 8/100冊


■こんな人におすすめ
・歴史ミステリーが好き
・軽い読み物がほしい


■概要
2時間サスペンスでおなじみの十津川警部です。原作の小説は全く読んだことなかったんですけど、先日実家に行った時に母(西村京太郎ファン)が読んでいたものを読ませてもらいました。原作の十津川警部は初めてですけど、読みやすい。ホントに読みやすい。

多分十津川警部とか相棒(?)の亀さんとかがちょいちょいそれまでの経緯をまとめてくれてるからだろうなぁと思います。やっぱり昔から続いてるシリーズは書き方が確立されてて安定感があるなぁーと思いました。。。最初のほうは。

これ、2時間サスペンスでやってるような列車旅行感覚が味わえるやつじゃあなくて、多分「たまにはこんなんやってみるか!」って感じで歴史物に手を出したんだと思います。

冒頭で起こる女性カメラマン殺人事件を十津川警部が捜査する体で話が進むんですが、実態は被害者の女性カメラマンが調べていた、終戦の日浜名湖で起こった謎をほぼ全編にわたって調査してます。マジでラスト2ページぐらいまでそっちの捜査。

当時の目撃者や当事者達の子孫に話を聞いて回るところなんかは「永遠の0」っぽい。面白いけど、十津川警部でやらんでもいいんじゃないかなー。

捜査本部で当時の米軍が残した記録について話し合う刑事達を見ると、お前らの職業なんだよとツッコミたくなるし。

個人的には女性カメラマンの事件と終戦の日の謎をもう少し密接につなげて欲しかった。じゃないと、十津川警部終戦の日について調べるきっかけにしかなってないです。女性カメラマンの事件を解決するだけなら、この本は数ページで終わります。

十津川警部の友人の学者とかを主人公にしたスピンオフでもよかった気がするな-。


■この本から学んだこと
・普段そのイメージのないキャラクターがいきなり戦争の話とかに手を出すと違和感がすごい


≪目次≫
省略

十津川警部 浜名湖 愛と歴史 (双葉文庫)

十津川警部 浜名湖 愛と歴史 (双葉文庫)

書評その7:「あなただけができることをやりなさい」

『あなただけができることをやりなさい
~ソフトウェア界の偉人23人の名言集~』
著者:細貝俊夫
発行日:2003/12/9
評価:★★★★☆
所要時間:2時間
読破冊数: 7/100冊


■こんな人におすすめ
・IT系の仕事についている人&これからつく人
・ITの分野に興味のある人
・コンピュータ史に興味のある人


■概要
IT系でこの手の本を見るのは初めてだったので物珍しさに購入。この分野で有名な人達を、おそらく著者か出版社の独断と偏見で選び、その23人を概略で紹介しています。

平易な文体で書かれているし、この分野の偉人がまとめられた本は(少なくとも自分の知る限り)あんまりないのでコンピュータ史を少し勉強しようかなと思ってる人におすすめ。各人物紹介のはじめの方にその人物の言った名言がまとめられています。文脈を知らないと名言に見えないものもあったりするし、正直名言のページはおまけかなと。

そう、メインは各人物のバックグラウンドで、名言のページはおまけにみえるんです。この本、副題に「ソフトウェア界の偉人23人の名言集」とあるので、本当に名言集を期待して読むとだまされた気分になるかも。
ただ、内容自体はためになるし読みやすいです。選出されている人物も「偉人」(「化物」かも。。。)と呼んで差し支えない人達なので、コンピュータ史の入門書の一つとしてはとってもいい本です。


■この本から学んだこと
覚えておきたい言葉を抜粋。
・「延々と続くこみ入った推論の中にも、なにかしら単純な一般原理が隠れているものだ。」by フォン・ノイマン

・「成功させるには、これまでの百倍の用心が必要でした。」by プレスパー・エッカート

・「ないからやろう」by 坂村健

・「若いときにスピード感のある仕事の進め方を身につけることは必須である」by 嶋正利

・「一番口に出していっちゃんいけないのは“いつもこの方法でやってきたから”という言葉なの」by グレース・ホッパー

・「良いプログラムを書くことは知性、趣味の良さ、忍耐を必要とする」by ビアルネ・ストラウストラップ

・「働くことへの準備と同じくらい余暇への準備も大事だ」by ジョン・ケムニー

・「あなただけができることをやりなさい」by エズガー・ダイクストラ

・「機械に向けてではなく、人間に向けてプログラムを書くべきである」by ドナルド・クヌース

・「一日を無駄にする方法はいくらでもある……しかし、一日を取り戻す方法は一つもない」by トム・デマルコ

・「どれほど素晴らしいものでも、万能だと思うのはちょっと問題ありだよね」by グラディ・ブーチ

≪目次≫
1 すべては彼らから始まった
~コンピュータの基礎を築いた先人たち~
2 どこでもコンピュータの時代が来た
  ~コンピュータの建築家たち~
3 こうしてソフトウェアは誕生した
  ~コンピュータ言語の作者たち~
4 あなただけができることをやりなさい
  ~ソフトウェア工学の貢献者たち~


書評その6:「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
著者:村上春樹
発行日:
評価:★★★☆☆
所要時間:5時間
読破冊数: 6/100冊


■こんな人におすすめ
・モヤモヤしたい
村上春樹が好き
・とにかく活字に飢えている


■概要
村上春樹の作品は昔「ノルウェイの森」を読んだときに「よくわからん」という印象を抱いてから今までずっと読んでませんでした。
登場人物のお洒落過ぎる趣味は目をつぶるとしても、文章にクセがあるから慣れてないとなんかへんな気分になるし、展開もスッキリするようなもんでもない。でも言葉の使い方が巧みで次にはどんな文章になるのか気になって読み進めちゃう。でも話はなんかモヤモヤする。

今回、この作品を読み始めた時、普通にミステリーっぽい感じがしたのでストレートに楽しめると思ったんですよ。
実際物語の中盤に主人公の追っていた謎が一つ解明されるけど、そこで衝撃的な事実と新たな謎がでてくる展開なんかはミステリー系の小説っぽいし面白いと思ったんですよ。
世間の評判聞いてて、そんなことしない作家だってわかっててもラストですべての謎が解明されるのを期待しちゃったんですよ。

でも謎の解明も主人公の恋の行方(失恋をにおわせる描写はあるけど)も読者の解釈に任せちゃう。置いてきぼりにされた感がすごかった。
ネットを検索すれば死ぬほど考察はあるし、自分で読み解きなさいということなんだろうけど。。。

うーん、村上作品をもっと読めば魅力がわかるんでしょうか。。。考察をあれこれめぐらすのが正しい楽しみかたなんでしょうか。。。
わからん。。。もう全然わからん。。。


■この本から学んだこと
・わからん。助けてハルキスト。


≪目次≫
省略

書評その5:「思想としてのパソコン」

『思想としてのパソコン』
著者:西垣通(編訳&序文&後書き)
発行日:1997/5/20
評価:★★★★☆
所要時間:10時間
読破冊数: 5/100冊

■こんな人におすすめ
・パソコンがマイコンと呼ばれた時代を生きた先輩方
・コンピュータが出たばかりの頃、研究者たちがどんな未来を描いていたか、気になる
コンピュータサイエンスを研究しようとしている人


■概要
まず、この本は論文集なので学術的な話が嫌いな人にはおすすめできません。
だけど、学術としてのコンピュータサイエンスに興味がある人や、論文の文章にある程度耐性のある人にはものすごくおすすめです。

この本で収録されているのは、ヒトとコンピュータとの関係を研究する上での「キーマン」と著者が呼ぶ7人の研究者たちの論文。
どれもすごいです。いずれの論文も現在のIT技術の問題を語っているんですが、何がすごいって今ほど情報技術が発達してなかった頃にまだ実現してもいないものに対して利点と問題点を提示し、ヒトがそれにどう関わっていくかを真剣に考えていたんです。ものすごい想像力じゃないですか。

例えば1章で紹介されているブッシュ(大統領ではない)の論文は未来の研究者の姿について、「動き回り観察しながら、写真をとり、注釈を述べる。写真と注釈とを結合するために時刻が自動的に記録される。~」
と言ってます。これって今スマホで実現可能なことだと思うんです。しかも、ブッシュが提唱する文書管理装置「メメックス」の構想はハイパーテキストという概念の先駆けとなるんですが、インプットした文書の検索やタグ付けなどの機能を一つの装置がもつ、というイメージは、今でいうEvernoteのようなアプリを連想させます。
この論文が書かれたの1945年ですよ。昭和20年ですよ。こんな思想が半世紀以上前にあったんです。

ブッシュの他にもウインドウやアイコンのようなインターフェースを実現したエンゲルパート、電子マネーや暗号通貨につながる概念に言及したケオーなどIT技術の原点を見ることができると思います。

敷居が高いと感じるなら著者のまえがきだけでも読んでみることをおすすめします。
7人の研究者についてわかりやすくまとめている上にコンピュータの発展について時系列順で解説されているため、ここだけでもパソコンの歴史を語った本として良書!


■この本から学んだこと
・「パソコン」に関するの概念はパソコンそのものが生まれるよりもずっと昔に語られていた。
・ある分野に対し、真面目に知識をつけようと思うなら原点は避けられない。特に学術的な分野はなおさら。


≪目次≫
まえがき 思想としてのパソコン
1 われわれが思考するごとく
2 コンピュータと知能
3 ヒトとコンピュータの共生
4 ヒトの知能を補強増大させるための概念フレームワーク
5 インタラクティブ・システムとバーチャリアリティ設計
6 協調活動の設計における言語/行為パースペクティブ
7 サイバースペースの陥穽

思想としてのパソコン

思想としてのパソコン

書評その4:「フランス人は10着しか服を持たない」

『フランス人は10着しか服を持たない』
著者:ジェニファー・L・スコット
発行日:2014/10/30
評価:★★★★★
所要時間:2時間
読破冊数:4/100冊

■こんな人におすすめ
・「かっこいい生き方がしたい」となんとなく思っている
・毎日がつまらない
・金遣いが荒い
・毎月気がつくと財布がピンチ
・安いからといっていつも100均とかで余分なものを買っちゃう

■概要
著者はフランスに留学経験があり、そこで出会ったホストマザー「マダム・シック」に感銘を受け、シックな生き方について発信し続けている人です。
物質主義に踊らされず、必要なものだけを買い、こだわりを持って暮らす。断捨離とかミニマリストとかよりは手を出しやすい領域かも。

全てのフランス人がマダム・シックみたいな生活をしているわけじゃないだろうけど、やっぱりこだわりを持って生きている人はどこか芯が通っていてかっこいいのだなぁという印象。
自分の場合、金遣いの荒い友人がいるし、ダイソーで雑貨を衝動買いしてはクローゼットのこやしにしてるから余計にね。。。

著者はアメリカ人です。アメリカも物質主義の国だからそこから来ればそらインパクトは強いですよ。翻訳のせいかも知れないけど、文体が終始テンション高めなんですもん。

個人的には日本ってアメリカと同じがそれ以上に大量生産&大量消費が根付いているので書かれていることを全部実践するのは難しいと思います。
とりあえず自分はiPodのイヤホンを100円ショップで買うのをやめました。ミクロすぎることだけど、いいものを長く使うことを意識し始めました。
自分の生活を見直すきっかけになる本なので浪費家の自覚がある方はどうぞ!

■この本から学んだこと
・買い物は、「今」必要な分だけ買う
・小腹が空いてお菓子を食べるくらいなら、我慢して夕食にいい材料を食う
・「安物買いの銭失い」はかっこ悪い
・小さなことでもこだわりをもてば、楽しみがいたるところにあることがわかる。

≪目次≫
まえがき
1 間食はシックじゃない
2 食べる喜びを我慢しない
3 面倒がらずに体を動かす
4 10着のワードローブで身軽になる
5 自分のスタイルを見つける
6 ノーメイクみたいにメイクする
7 いつもきちんとした装いで
8 女らしさを忘れずに
9 いちばん良い持ち物をふだん使いにする
10 散らかっているのはシックじゃない
11 ミステリアスな雰囲気を漂わせる
12 物質主義に踊らされない
13 教養を身につける
14 ささやかな喜びを見つける
15 質の良さにこだわる
16 情熱をもって生きる

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~

書評その3:「ウェブ進化論」

ウェブ進化論
著者:梅田望夫
発行日:2006/2/10
評価:★★★★☆
所要時間:3時間
読破冊数:3/100冊

■こんな人におすすめ
・インターネットの発達がどんな変化を社会にもたらしたか、今さら聞けないけど詳しく知りたい人
・「Googleってどんな会社?」な人
・「Amazonってどんな会社?」な人

■概要
2006年のはじめに出た本です。当時はライブドアがフジテレビを買収しようとしたり、楽天プロ野球に参入したりと、IT業界、特にウェブサービスが注目され始めていました。ブログ、アフィリエイトオープンソースなんて言葉も有名になり始めたのはこのぐらいの時期だったんじゃないでしょうか。


そんな風にIT企業が注目され、情報化社会が進むにつれて人々の考え方も変わってきていました。この本はその変化が起こり始めた時期に、当時から注目されていたGoogleAmazonを中心に、これらの会社が持つ理念(考え方?)を紹介しつつ、今後の変化を予測しています。


個人的に特に面白かったのが、Amazonの販売戦略などに見られる「ロングテール」の概念。この本を読むまでは聞いたことがある程度のものだったんですか、とてもわかりやすく説明してくれています。
各一冊しか売れていない本たちの売上をかき集めればバカにならない金額、というのは理解できてもAmazonが台頭する以前の大型書店のほとんどはマイナーな本を取り揃えようと思っても、コストや店のスペースを考えれば実行に移すことはできなかったでしょう。
しかしインターネットがその問題を一気に解消しました。今では本も含め大抵のものはネットショッピングで手に入ってしまいますが、「こんなもん売れるの?」と言われる商品があることが大きな強みであり、Amazonが急成長した理由の一つはそこに早くから注目したからです。


インターネットが流行り始めて約10年たってこの本が出版され、現在さらに10年が経過しました。「ロングテール」以外にもこの本で紹介されている価値観や企業たちの理念が今どんな変遷を遂げているか、を考えてみると更なる進化の先が見えてくるかも。。。


■この本から学んだこと
AmazonGoogleで働いていた人たち(経営陣含む)の考え方
・1990~2000年代のIT化で何が変わったか

≪目次≫

まえがき  ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
1 「革命」であることの真の意味
2  グーグル――知の世界を再編成する
3 ロングテールWeb 2.0
4 ブログと総表現社会
5 オープンソース現象とマス・コラボレーション
6 ウェブ進化は世代交代によって
7  脱エスタブリッシュメントへの旅立ち

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

書評その2:「人間の覚悟」

『人間の覚悟』
著者:五木寛之
発行日:2008/11/20
評価:★★★★☆
所要時間:3時間
読破冊数: 2/100冊


■こんな人におすすめ
・最近、時代の変化についていけないと感じている人
・将来に漠然と不安を感じている人
・生きることに、なんとなく疲れている人


■概要
2008年に新書として発行された本なんですが、今でも十分に読まれる価値のある本だと思います。当時は秋葉原の連続殺傷事件や、10年連続で自殺者が3万人を超えたという記事が新聞の一面を飾るなど鬱屈とした雰囲気の報道が多いように感じました。著者の五木さんは当時を「『地獄』へ向かって~」と表現しており、時代が下り調子にあることを強調しています。

その中で発行された本書が伝えているのは、「あきらめる」こと。

これはネガティブな意味では使われてはいません。筆者曰く、「明らかに究める」こと。今自分の生きている時代が上り調子なのか下り調子なのかを見極め、自分にできることとできないことを判断することです。

自分の力ではどうしようもないことを無理にやろうとして失敗したり悩んだりするよりは、まず今の状況でできることに目を向けることが大事、ということだと勝手に解釈してます。

発行から10年たった現在でも、この「明らかに究める」視点は持っておいて損はないと思います。
社会が上り調子にあると感じている人も下り調子にあると感じている人も(後者がほとんどだと思いますが)一度読んでみては如何でしょう?


■この本から学んだこと
・自分の力ではどうしようもないと感じた時は一旦置いて自分のできることからはじめる
・あらゆるものは変わり続ける
・とりあえず、生きてることが一番大事


≪目次≫
まえがき
1 時代を見すえる
2 人生は憂鬱である
3 下山の哲学を持つ
4 日本人に洋魂は持てない
5 他力の風に任せること
6 老いとは熟成である
7 人間の覚悟

人間の覚悟 (新潮新書)

人間の覚悟 (新潮新書)